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自動車用ソフトウェアプラットフォーム開発 自動車メーカーが共通で使える、国内発の標準プラットフォームを目指して。

PROJECT MEMBER

M.H (プロジェクト長)
K.U (リーダー)
K.W (システムエンジニア)

「AUTOSAR」の仕様に基づいた
車載ソフトウェアプラットフォーム開発がスタート

今、自動車業界は大きな変革期を迎えています。これまで自動車製造はハードウェア優先の世界でしたが、近年はコンピュータ制御の比重が高まっており、より高度な車載ソフトウェアの開発が求められています。そんな中、キヤノンITソリューションズのエンジニアたちが名古屋大学発ベンチャー企業のAPTJ社に参画し、欧州の自動車メーカー主導で業界標準になりつつある「AUTOSAR」の仕様に基づいた車載ソフトウェアプラットフォーム開発をスタート。開発に携わった3人に話を聞きました。

日本発の車載ソフトウェア
プラットフォームを目指す

M.H
今回のプロジェクトが始まった背景には、自動車製造業界におけるメインプレイヤーが、ハードウェアメーカーからソフトウェアメーカーへと移り変わりつつあります。近年製造されている一般的な自動車には、約100種にのぼる制御ソフトが搭載されており、アクセル、ブレーキやハンドリングなど、自動車の操作に必要なあらゆる機能を制御しており、これらの車載ソフトはますます増加し、価値は高まっていくでしょう。中でも、そうした個々の制御ソフトの基盤となる車載ソフトウェアプラットフォームは、パソコンのOSにあたる、とても重要なものですが、現在はメーカー各社が独自のプラットフォームを使っており、仕様が統一されていません。世界共通の優れたプラットフォームがあれば、各メーカーのソフトウェア開発のさらなる効率化が期待できます。すでに欧州では、AUTOSARという車載ソフトウェアプラットフォームの仕様が業界標準になりつつあります。このAUTOSARの仕様に準拠した、日本発の車載ソフトウェアプラットフォームを作ろうというのが、今回のプロジェクトの目的です。
K.U
今回のプロジェクトは、名古屋大学発ベンチャー企業のAPTJ社と共に2016年の1月にスタートしました。当社から参加したエンジニアは、我々3人も含め、これまでキヤノン製品の制御ソフトを開発していた当社の社員です。カメラや複合機も、人の操作によって機械を動かすという点では自動車と変わりませんし、キヤノンブランドが追求してきた信頼性の高さは、自動車業界との親和性も高い。そうした期待を受けて、我々はこの開発に参加しました。
K.W
車載ソフトウェアプラットフォームは個別の制御ソフトと違い、直接的に自動車を操作するものではありません。しかし、制御ソフトがエラーで動かなくなったときや、機械部品が故障したときなどに、人命にかかわる自動車事故を起こさないためにどのような動作をすればいいか(たとえばアクセルが壊れたとき安全に止まる、など)という、最終的な安全性を確保する重要な役割を担っています。このため、開発においては自動車の機能安全に関する規格や車載ソフトの開発プロセスも習得する必要がありました。
K.U
AUTOSARでは各メーカーが個別の制御ソフトを新たに開発するとき、このプラットフォームがベースとなり、開発コードを使いまわすことができるよう配慮しています。これによって、車載ソフトの開発効率が従来より高められるというわけです。

キヤノン製品の開発経験が、
車載ソフトウェアプラット
フォームの開発にも
活かされる

K.W
私はこのプロジェクトに入る前はキヤノン製複合機の開発に携わっており、自動車関連の開発は初めてでした。しかし、キヤノン製品の開発においては品質に対する意識が非常に高く、品質向上に向けた開発プロセスも整備されています。車載プラットフォームの開発においても、最も重視されるのは徹底した品質管理。その点では、これまでの開発経験が大いに役立ち、違和感なく開発に臨めたと感じています。
K.U
私も同様に、もともとは複合機の開発者でした。キヤノン製品の開発では高い品質を確保するために徹底してテストを行うのですが、その点は今回のプロジェクトでもそのまま役立ちましたね。一方、車載プラットフォーム開発ならではの厳しさも感じました。自動車業界では、品質問題が発生した場合、迅速に原因究明ができるよう、開発プロセスの詳細をドキュメント化することが求められます。たとえば会議の議事録一つとっても、誰がどんな発言をしたのか正確に記録しなければなりません。どのようにして開発が進められたかという「証拠」をどの程度まで細かく残さなければならないのか、はじめはそのさじ加減がわからず苦労しました。
K.W
私が個人的に苦労したのは、プラットフォームの仕様であるAUTOSARについて調査するとき、資料がすべて英語で書かれていたことでしょうか。開発は完全にAUTOSARの仕様に則って行う必要があるのですが、時には解釈の難しい文章もあります。そうしたときにはチームメンバーと相談したり、一つひとつ解決していきました。

正式リリースに向けて
開発は続く

M.H
2016年からスタートしたプロジェクトの試作品は、2017年11月に開発が終了しており、今は試作対象を広げラインナップ拡充に取り組んでいるところです。
K.U
我々の開発した車載ソフトウェアプラットフォームは、欧州の標準規格であるAUTOSARの仕様に則ったものですので、実現できる機能自体に他の製品との違いはありません。ですので、我々が差別化に取り組んだのは、「それらの機能をどう実現するか」。機能自体は同じでも、プラットフォームの性能を上げれば、自動車の制御ソフト全体の処理速度など性能を高めることができる。その点で、今回開発したプラットフォームは他社のプラットフォームと比べて優れていると自負しています。
M.H
今の話に補足すると、近年は車載ソフトの数が増加する一方で、その分自動車の製造コストも上昇傾向にあります。もちろん、車両に性能の高いマイクロコンピュータを搭載すれば処理速度を高めることは簡単なのですが、容量の低いメモリで同じ処理が効率よくできるなら、そのほうがメーカーとしてはコスト競争力を高められるわけですね。そうした点で、我々のプラットフォームは日本の自動車産業に貢献できると考えています。
K.W
現場の開発者として今回のプロジェクトを振り返ると、車載ソフトに関するナレッジを幅広く取り入れることができ、エンジニアとして大きく成長できたと感じています。現在、新しいプラットフォーム開発に取り組む中で特に掘り下げているのが通信系の技術。車両に搭載された機械同士、ソフトウェア同士はネットワークでつながっているのですが、自動車のIT化が進むにつれ、やりとりされる情報量もどんどん増加しています。今後の車載ソフトウェア開発に役立つスキルを磨くことができている、と実感しています。
M.H
通信技術についてさらに言うと、今後は車両内だけではなく、車両と外の世界との通信もさらに重要度を増してくるでしょう。たとえば離れた場所から開錠できるキーレスエントリーもそうですが、交通情報をカーナビに取り入れたり、逆に走行データを外部のシステムに送ったりといった通信も、これからはより盛んにおこなわれると考えられています。
K.U
今回の開発で学んだ組込みソフトウェアの開発ノウハウや、セキュリティも含めたITに関する幅広い課題解決力などは、キヤノン製品の開発においても活かすことができるでしょう。また、自動車製造は機能安全や信頼性が高い水準で求められるので、キヤノングループが展開している、安全性を求められるクリティカルな領域でも、ここで得たノウハウがいずれ役立つと思います。

「自動車産業の新たな時代」に向け、挑戦は続く

M.H
現在私たちは、新たな車載ソフトウェアプラットフォームの開発に取り組んでいます。その中で考えなければならないのは、自動車業界が今、技術的に大きな転換期を迎えていることです。とりわけ「自動運転の実用化」は自動車産業を一変させることになり、自動車製造の分野で我々のようなソフトウェアベンダーが果たす役割はかつてない大きなものとなるでしょう。キヤノンITソリューションズには、豊富な経験を積んだ組込み技術者が多数在籍しており、自動車分野だけでなく、その他のさまざまな分野の製品も手がけられるチャンスがある。そうしたモノづくりの喜びを、これから入社する人にも体験してほしいと考えています。
K.W
多岐にわたる分野の開発を手がけているところは、キヤノンITソリューションズならではの魅力だと思います。我々技術者としては、常に新しいノウハウや技術を学び成長できるチャンスがあるので、働き甲斐のある環境だと思いますね。引き続きこのプロジェクトを通じ、車載ソフトウェアプラットフォームの技術や、より信頼性の高い開発プロセスを身につけたいと考えています。
K.U
私の目標は、AUTOSAR準拠の車載ソフトウェアプラットフォームの開発を成功させることです。そのためには、我々のプラットフォームもより高い完成度で仕上げていかなければなりません。「全く新しい自動車の時代」を自分たちの手で切り拓いて行ける仕事に、ワクワクしています。